コーヒー屋、カフェなど呼び方はいろいろありますが、この業態が難しいのは客単価が上がりにくいところ。

酒とは違い、コーヒーやソフトドリンクは一人で何杯も飲むものではなくほとんどのお客様は飲み物一杯で退店されます。

そのため商品がコーヒーのみではどれだけコーヒーの価格を上げても一度の会計が三桁で終わってしまい、日商月商が伸びません。

にもかかわらず毎月払わなければいけない費用は数十万円。これではコーヒーを何杯売ればいいのか想像するだけで気が遠くなります。

なので開業する前にどうやって日商月商を確保するのか考えておきましょう。

ということで何をいくらでどれぐらい売れば大丈夫か?この考え方を解説していきます。

個人のカフェやコーヒー屋に来るお客様は少ない

夢を見がちですかオープンしたての個人営業カフェやコーヒー屋に一日何十人もお客様は押し寄せません。

一日営業して誰も来ない、来ても一人や二人なんてよくあります。毎日最低十人来ればかなり安定している店と言ってもいいでしょう。

なのに創業計画書を作る時に創業当初の来店客数を三十人、四十人で試算し、コーヒー一杯500円で売る計画を立てたりする人がいます。

仮に三十杯売っても1万5千円、四十杯売っても2万円。しかも計画より来店客数が少ないとどうにもなりません。

はっきり言ってオープン時点で負け戦。もはや廃業の道しか残されていません。

売り上げが増える構造を作ってから開業する

なので一日の客数が少なくても成立する構造をオープンする前に考えておきましょう。

今回はワンオペ営業の例とします。

具体的に一日で席数の多くても三分の二の客数で営業を維持できる客単価を設定します。

この数値を出すには損益分岐点という黒字でも赤字でもなくなる売り上げを計算しておかなければいけません。

損益分岐点の計算方法

損益分岐点は、固定費(毎月発生する金額が同じ費用)を限界利益率(1ー変動費率)で割る。
変動費率は仮として、光熱費5%、消耗品費1%、原価率30%なので、変動費率は36%。
1(この場合100-36=64)からこの変動費率を引いた数字の64が限界利益率。

固定費20万なら200,000÷0.64=312,500

例えば増田珈琲店の場合、一ヶ月で20万円の利益、売り上げが31万円あれば運転資金が減らないので店は維持できます。

ここまで求めずに限界利益率を粗利率で求める場合もありますが、その場合は水光熱費や人件費が毎月あまりブレないことが条件ですが割合で出さずに金額で出し、固定費に入れれば粗利での計算も可能です。

そして損益分岐点は自分の生活費も込みで計算してください。そうしないと店舗は維持できても自分の生活ができなくなり結局店舗運営ができなくなります。

僕の場合、サラリーマン時代の手取り収入を自分の生活費として足しているので一カ月で固定費43万円ほど、一カ月売り上げ70万円ほどあれば問題ありません。

損益分岐点から売り上げや客単価を逆算する

損益分岐点が月商70万円の場合で毎日営業だった場合、70万円を30日で割ると1日2.3万円なので2.3万円を1日で売ることができれば赤字ではなくなります。

コーヒー1杯500円なら46杯、1杯600円なら38杯,700円ですら33杯が一日で必要。

お客様1人につき1杯ならそのまま必要な来客数です。

繰り返しにはなりますが個人営業で開業初期からこの来客数は観光地の真ん中や商業施設のような立地でないかぎり不可能。

なので上記のように現実的な来客数で損益分岐点を超える客単価の組み立てが必要となります。

最初は席数の半分の来客すら難しい

増田珈琲店の場合は席数19席なので9.5人ですが0.5人なんて人がいたら怖いので10人です。仮に8時間営業ならさきほどより現実的な来客数になったと思います。

正直オープン当初はこれでもキツイので安定するまで運転資金で耐えなければいけませんし、僕の場合は1日14人の来客が必要なのでもう少し必要。

自己資金は半年分、1年分貯めてから開業したほうがいいという意見が多いのはこのためです。

コーヒー屋の高単価は難しい

上記の組み立てとは席数の三分の二の来客数で達成できる客単価を作ること。

つまり2.3万円を13人で達成しようとすると客単価1770円です。

実際は一カ月で何日営業するかで1日に必要な売り上げは変わるので必要な客単価も変わりますが、オープン当初から週休2日も珍しいと思うので休日なしの計算でいきます。

1人のお客様の会計に1760円払っていただければ達成です。

当店でオープン初月は1100円で現在は客単価1600円なのでまだ超えていません。それほどコーヒー屋の業態で客単価を上げるのは難しい。

しかし、コーヒー屋やカフェを経営したければ避けては通れないことなので客単価を上げる方法を考えてからオープンしてください。

客単価を上げないとクレームにつながる

コーヒー専門店ならコーヒー豆やドリップバッグを売り、喫茶やカフェならフードを提供することが客単価を上げる正攻法です。

しかし客単価を上げず、イートインのコーヒーのみだと上記のように多くの来客が必要になり、8時間営業なら1時間あたり3杯4杯必要。

それぐらいなら問題ないと思うかもしれませんが、お客様は均等に来店はしてくれず、なぜか同じタイミングで来店されることがよくあるんです。

コーヒースタンドならなんとかなるかもしれませんが、席に座ってもらう業態だとワンオペではキツイ瞬間がかならずやってきます。

そこで無理をするとお客様が不満を感じはじめ、いずれクレームにもつながり始めます。

客数で売り上げを稼ぐのは大手のやりかた

このように客数で売り上げを上げる方法は大手企業のやりかたです。

  • 繁華街に大きな箱で出店し
  • 大量の宣伝、大量の席を用意して
  • 人を雇い
  • マニュアル通りにさばいてもらう

上記を実行しようとするとオープン前から多額の資金が必要になるので、個人ではとても真似できるやりかたではありません。

高単価に納得してもらう

ここまで解説してきた考え方だと商品単品の価格がどうしても高くなります。

増田珈琲店の場合だとドリンクの最低価格は700円、フードは最低550円のトーストですがウリにしている商品は900円のチーズケーキ。

コンビニコーヒーや缶コーヒーがある世の中でコーヒー1杯700円以上は僕でも高いと思います。

それでもほとんどのお客様はコーヒーとチーズケーキをご注文されて最低1600円のお会計。なのに高いとも言わずに再来店していただけます。

付加価値をつける

コーヒーが美味しいのは当たり前。

しかしそれだけでは高価格の商品は売れませんし、売れても再来店はないでしょう。

なら付加価値を付けましょう。

難しく考えなくても大丈夫です。

  • 食器が高級品
  • 店内の雰囲気が好き
  • ゆっくりできる

上記のような目に見えるもの、感じるものが付加価値になります。

しかしお客様にとって価値のあるものしか付加価値にはなりません。食器に興味が無ければ高級品でも安物でも同じです。

増田珈琲店の付加価値

増田珈琲店の目指すところはSNSなどで見て行きたいと思う目的来店型の店ではなく、一度来店されたお客様が近くにきたから、いつもの習慣だから来店するといったいわゆるインフラ型を目指しています。

なのであえて付加価値は派手ではなく

  • 迷わせない
  • 押し付けない
  • 干渉しない

にしています。

食器はブランドですし、雰囲気も嫌いという人はいないと思うレベルの店内ですが、当店の付加価値はこれらではなく上記の三種類です。

迷わせない

全部美味しそうに見えて何を食べるか迷ってしまう。

こんな迷い方は問題ありませんがコーヒーのように産地や精製方法などの専門用語が並んでいる場合の迷い方はよくありません。

お客様からすると何を選べばいいのか分からないのでストレスでしかないからです。

なので当店はメニューの一番上段にお任せメニューを三種類記載し、コーヒーに詳しいお客様には中段に詳しいコーヒーメニューが記載されています。

コーヒー専門店ではなく、喫茶店寄りにしているからこそ判断しました。

押し付けない

増田珈琲店のウリはこれです!当店はこうやって楽しんでください!

こうしなければならないといった流れを見えないようにしています。

ただコーヒーもフードも置いてあるだけでオススメなどの煽り文句は一言も書いていません。

お客様に使いたいように使ってもらう。ゆっくり過ごしても、小腹がすいたから満たしに来ただけでも大丈夫。

そんな意図で店を作っています。

干渉しない

押し付けないと似ていますが、お客様が望んでいるか分からないのにこちらから話しかけに行くなどはしていません。

お客様の関係値しだいですが、基本的には放置です。

しかし放置できるのは迷わせないというコンセプトがあるからこそできること。

こちらが何もしなくてもお客様が自分で決めたことをもくもくと作業するだけでいいんです。

集客は大切だが客単価を上げることも大切

ここまで解説してきたことをまとめると客単価が高くなるように設計してから集客をはじめなければいけません。

客単価が箱の大きさ、お客様が水量。

箱が小さければどれだけ水量が多くても箱に溜まりません。

集客はたしかに一番大切ですが、集客を意味のあるものにする客単価もまた大切です。

客単価の高さは満足度の高さ

ある日、当店に男性のお客様がいらっしゃいました。

注文は深煎りコーヒーとバターチーズトースト。

雰囲気からするとその注文で終わると思っていましたが、なんと食べ終わったあとにコーヒーとチーズケーキを注文されました。

1人でフルセット2人分の注文をしていただいたのです。

当店はコーヒーもフードも安くはありません。

お腹の具合もあるので絶対にそうとは言えませんが食べてみたらが期待以上だった。それならこれも食べてみたいとなります。

客単価を上げるには導線とメニューが大切

客単価の大切さを書いてきましたが実際にどうやって上げるのか?を書いていきます。

勝負は店舗に入る前から

SNS経由のお客様なら写真で何を注文するか決めてきますし、通行人なら店構えや店頭看板を見てから入店してきます。

つまり商品を実際に食べる前に価値があるかどうか判断しています。美味しそうだから食べてみたい、高くても食べてみたい。

客単価をあげるにはお客様にこう思っていただかなければなりません。

https://masudaroastery.com/店頭の看板デザイン調整に数週間かかった話/

メニュー表の並べ方で高く見せない

100万円のサービスを買う時に5万円のオプションが安いと思うように人は価格を比べます。

この性質を使ってウリの商品を高く見せずに注文してもらいましょう。

増田珈琲店のフードのウリが900円のチーズケーキですが、上に1200円のクロックムッシュがあり、下の価格に600円台の焼菓子があります。

聞いたことあるかもしれませんが松・竹・梅の法則です。さらにメニューにチーズケーキしか写真をのせていません。

高単価を怖がらない

価格が高いと売れないかもしれない。その気持ちよくわかります。

でも計算しつくして出した価格が高くてもその価格で売らないと利益が出ないなら売りましょう。

意外と買ってくれるお客様は多いです。当店のコーヒー価格は最低700円と地方都市の喫茶店としては高めですが、いまだに高いと言われたことはありません。

高く売るのが仕事

安く売ればそれなりに売れますが、それでは売っても売っても利益が微々たるもので天気などの外部要因で簡単に赤字になってしまいます。

さらに安さで売ってしまうと自店より安い店が近くにできるとお客様が安い方にながれてしまいます。

ボッタくれと言っているわけではありません。

原材料費は当然として光熱費や家賃など営業するために必要なコストをしっかり価格に転嫁しましょう。

その結果、高価格で売らなければいけないなら価格以外の部分でどうやってお客様に納得してもらうかを考えることが経営者の仕事です。

利益を残すには粗利が大事

飲食業には原価率30%にしないといけないという暗黙の了解みたいなモノがありますが、あくまで基準として考えてください。

原価率はおおよその基準として考えれば大丈夫で、原価率30%を真面目に考えすぎると提供できる商品が限られてしまいます。

では何を基準として考えればいいのかというと粗利です。

粗利とは商品価格から原料費を引いて出てくる数値です。

粗利を重視する理由

例えばですが

  • 原価30円の物を100円で売る
  • 原価300円の物を1000円で売る
  • 原価3000円の物を10000円で売る

上記はすべて原価率30%です。

すると粗利はそれぞれ70円、700円、7000円。

この粗利からさらに色々引いて最終的な利益が決まるんですが、計算しだすと細かくなるので今は粗利で計算していきましょう。

  • 粗利70円なら1428個
  • 粗利700円なら142個
  • 粗利7000円なら14個

例えば家賃が10万円だとすると家賃を払うために売らなければならない個数が上記になります。

売値が100円なんだから売れるだろうと思いますがここが罠で、この売値100円の商品が欲しい人がたくさんいなければ成立しないんです。

需要が100人にしかないならどう頑張っても100個までしか売れませんし、実際は需要に対して100%自分のところから買われることはありません。

よって上記の例だと粗利700円までは計画時点で破綻しています。

固定費の支払いは粗利から

粗利を積み重ねて固定費を支払います。繰り返しますが厳密には粗利から変動費を引いた数値を積み重ねるんですが話が細かくなりすぎるので粗利で計算します。

原価率30%を超える商品があっても粗利がしっかりあるなら問題ありません。

当店にはコナコーヒーというコーヒーがありますが原価率30%以上です。それでもイートインの提供でも粗利1000円、豆100gの持ち帰りなら原価率50%を超えていますが粗利2500円です。

どうでしょう?なんとか原価率30%以下にして粗利数百円を積み重ねるよりは固定費の支払いを大きく助けるように思えませんか?

高原価率商品のみでは成り立たない

とはいえ上記のコナコーヒーの例は極端。

コーヒー屋で原価率50%ばかりの商品を置くのは現実的ではありません。

コーヒー屋で使う金額は1000円~2000円とほとんどの人が思っています。

そこで原価率50%にして売値1500円にすると凄まじい商品、いわゆる神コスパ商品ができあがり、お客様が殺到します。

そうなるとワンオペで回すのは不可能、人を雇うか無理をして身体を壊すかのどちらかになり経営の難易度が上がります。

逆に原価50%で粗利数千円を得るために売値を3000円や4000円以上にしてしまうと今度は客層を絞りすぎることになってしまい売れる日、売れない日の差が激しくなります。

人口が多い東京や大阪なら面白いかもしれませんが地方では厳しいでしょうし、ここまで行くと飲食店というよりは芸能人のディナーショーのような体験型の店となるのでまた違う悩みも出てきます。

高原価率と低原価率の組み合わせでバランスをとる

結局やることは高原価率と低原価率の商品をメニューに混ぜて一緒に頼んでもらうことです。

居酒屋でドリンクを頼まれないと儲からないと言われているのはそういうこと。

フードを原価400円の売価1000円のように原価率40%にすると立派な商品になるのでフードで宣伝して来店してもらうイメージです。

コーヒー屋や豆屋は戦略が変わる

増田珈琲店はコーヒーの種類が豊富な喫茶店ですが、もっとコーヒーに特化した店の場合はお客様の追加購入の動機が変わります。

知り合いにあげるか家で飲む。コーヒーを持って帰る動機が主にこの二つ。

フードの場合、美味しそうという部分で幅広くお客様を呼べますが、コーヒー特化の場合そこが難しくなり遠方からコーヒー好きやマニアを呼んでくる必要があります。

リピーターが付けば強いですが、そもそも客層を絞っている分新規のお客様が少ないので軌道に乗るまでに資金が耐えきれないことが考えられます。

なのでたっぷりと運転資金を用意するか、店舗を小さくして可能な限り固定費を抑えるようにして時間を稼ぎましょう。

夢を叶えるなら逆算して考える

コーヒー屋はロマンあふれる商売ですが、その土台を支えるのはシビアな数字です。

「夢」や「こだわり」をお客様に届け続けるためには、今回解説したような「客単価」と「粗利」の設計図が欠かせません。

お客様がたくさん来なくても、あなたとあなたの家族が笑って暮らせる売上を作るには、コーヒー1杯いくらで、何をセットにすればいいのか。

原価率30%という教科書の数字ではなく、あなたの店に必要な「粗利額」はいくらなのか。

オープンしてから「こんなはずじゃなかった」と嘆く前に、今すぐ計算機を叩いてみてください。

高単価は、あなたの店が提供する価値への自信の表れでもあります。

迷わせないメニュー、心地よい空間、そして美味しいコーヒーとフード。これらを適正な価格で提供し、長く愛されるお店を目指しましょう。

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